セルフケア不足の看護計画と関連図|OP・TP・EP・アセスメントを解説
「セルフケア不足の看護計画がうまく書けない」「OP・TP・EPには何を入れればいい?」「食事・清潔・更衣・排泄をどう分けて考えるの?」
看護実習では、患者さんができない動作に目が向きがちです。しかし、セルフケアの看護では何ができるか、なぜ難しいのか、どこに援助が必要なのかを整理することが大切です。
この記事では、セルフケア不足のアセスメントから看護問題、短期・長期目標、食事・入浴/清潔・更衣/整容・排泄のOP・TP・EPまで、看護学生向けに解説します。
① セルフケア不足の原因とアセスメント
② 看護問題・看護目標の立て方
③ 食事・清潔・更衣・排泄のOP・TP・EP
④ 慢性期脳梗塞の架空事例による関連図の考え方
⑤ A3横の看護関連図教材
学習上の注意:この記事の看護計画は一般的な例です。実際の患者さんでは、疾患・障害の程度・治療上の指示・本人の希望・生活環境などを確認して個別化してください。
- セルフケア不足とは?看護問題の基本
- セルフケア不足のアセスメント|確認したい5つの視点
- セルフケア不足の看護問題・看護診断の書き方
- セルフケア不足の看護目標|短期・長期目標の例
- 【食事】セルフケア不足の看護計画|OP・TP・EP
- 【入浴・清潔】セルフケア不足の看護計画|OP・TP・EP
- 【更衣・整容】セルフケア不足の看護計画|OP・TP・EP
- 【排泄】セルフケア不足の看護計画|OP・TP・EP
- 【事例】慢性期脳梗塞・認知症・四肢拘縮がある80歳患者のセルフケア不足
- セルフケア不足の看護関連図|病態から看護援助までのつながり
- 【A3関連図教材】慢性期脳梗塞のセルフケア不足を1枚で学ぶ
- セルフケア不足の看護計画でよくある質問
- まとめ|セルフケア不足の看護では残存能力と生活の質を大切にする
- 関連記事
- 参考資料・出典
セルフケア不足とは?看護問題の基本
セルフケアとは、食事、清潔保持、更衣、排泄など、自分の生活を維持するための行動です。疾患や障害、治療上の制限、認知機能の変化などによって、必要な動作を自分で行うことが難しくなる場合があります。
看護では、本人ができる部分を活かし、必要な部分を補うという視点が重要です。
ただし、必ずしも完全自立を目指すわけではありません。慢性疾患や重度の障害がある場合には、苦痛や危険を減らし、適切な介助を受けながら本人らしい生活を維持することも大切な目標です。
セルフケア不足が生じる主な原因
- 脳卒中などによる麻痺・運動機能の低下
- 関節拘縮や関節可動域の制限
- 疼痛・疲労・呼吸困難などによる活動の制限
- 高次脳機能障害による注意・記憶・遂行機能などの障害
- 認知症による理解・判断・行動の変化
- 術後の安静度や医療機器による動作制限
- 生活環境の不適合、自助具や支援体制の不足
同じ疾患でもセルフケア能力は患者さんごとに異なります。病名だけで介助量を判断せず、実際の生活動作を観察しましょう。
セルフケア不足のアセスメント|確認したい5つの視点
| 視点 | 観察・確認する内容 |
|---|---|
| 身体機能 | 筋力、麻痺、関節可動域、拘縮、疼痛、疲労、姿勢保持 |
| 認知機能 | 注意、記憶、理解、判断、手順の遂行、意思表示 |
| ADL | 食事、清潔、更衣、排泄の各工程で可能な動作と必要な介助 |
| 安全性 | 転倒、誤嚥、皮膚損傷、治療上の制限、医療機器の管理 |
| 心理社会面 | 本人の希望、生活習慣、羞恥心、不安、家族の介護負担、生活環境 |
例えば「食事が自立していない」という情報だけでは不十分です。食具が持てないのか、食事動作の手順が分からないのか、姿勢が保持できないのか、嚥下に問題があるのかを分けて考えます。
ADL評価に使えるBarthel Index(BI)
Barthel Indexは、食事、移乗、整容、トイレ動作、入浴、歩行、階段昇降、更衣、排便管理、排尿管理の10項目からなるADL評価尺度で、合計100点満点です。
ただし、合計点だけでは介助が必要な理由や具体的な動作は分かりません。評価尺度と実際の動作観察を組み合わせることが大切です。
「できる・できない」だけでなく、どの工程で、どのような理由から、どの程度の援助が必要なのかを記録しましょう。患者本人の希望や安全性も重要な評価項目です。
セルフケア不足の看護問題・看護診断の書き方
セルフケア不足を看護問題として整理する場合は、原因と、生活上の具体的な困難を組み合わせると援助計画につなげやすくなります。
看護問題の文章例
- 上肢の関節可動域制限に関連した更衣動作の困難
- 術後の活動制限に関連した清潔保持の困難
- 認知機能の低下により排泄動作の手順が分からず、見守り・声かけを必要とする状態
- 筋力低下と疲労により、一連の食事動作を継続することが難しい状態
これらは看護問題を説明するための文章例です。NANDA-Iの正式な看護診断名と必ずしも一致するものではありません。正式な診断ラベルを使用する場合は、学校・施設が採用している分類と版を確認してください。
セルフケア不足の看護目標|短期・長期目標の例
看護目標を立てる際は、「ADLが改善する」などの抽象的な表現だけではなく、どの動作を、どの程度の介助で行えるようにするのかを具体化します。
| 領域 | 短期目標の例 | 長期目標の例 |
|---|---|---|
| 食事 | 本人に適した食具を用いて、可能な工程を実施できる | 安全性を確認したうえで、必要な支援を受けながら食事を継続できる |
| 清潔 | 清拭時に自分で洗える部位を実施し、援助が必要な部位を伝えられる | 身体状況に合った方法で清潔を保持できる |
| 更衣 | 更衣時に自分で行える動作と介助が必要な動作を確認できる | 適切な援助や自助具を使用し、安全に更衣を行える |
| 排泄 | 排泄の希望や援助の必要性を伝えられる | 尊厳と安全を保ちながら、本人に適した方法で排泄を行える |
上記は一般的な例です。認知機能や運動機能に重い障害がある場合には、意思表示の方法や安全な介助方法の確立など、患者さんの状態に合わせた目標へ調整します。
【食事】セルフケア不足の看護計画|OP・TP・EP
食事のセルフケアでは、食具の使用、姿勢保持、食事動作の継続、介助の受け入れなどを確認します。摂食・嚥下機能に問題が疑われる場合は、食事動作の自立支援よりも安全性の確認を優先します。
OP|観察計画
- 食事動作の自立度と介助が必要な工程
- 上肢の運動機能、関節可動域、食具操作の可否
- 座位姿勢、体幹保持、疲労の程度
- 食事摂取量、食欲、食事に要する時間
- むせ、咳込み、湿性嗄声など嚥下に関する所見
- 口腔内の状態、疼痛、義歯の適合
- 食事形態や姿勢などに関する指示・多職種評価
TP|援助計画
- 食前に姿勢と食器の配置を調整する
- 本人が行える食事動作を確認し、必要な工程を援助する
- 必要に応じて食具や食器の工夫を検討する
- 疲労や疼痛に応じて休息と援助方法を調整する
- 嚥下障害が疑われる場合は安全確認を行い、必要な報告と専門職への相談につなげる
EP|教育計画
- 本人に合った食具・食事姿勢について説明する
- 食事中の困りごとや体調の変化を伝える方法を確認する
- 家族・介助者へ評価に基づく食事援助の方法を共有する
【入浴・清潔】セルフケア不足の看護計画|OP・TP・EP
清潔に関するセルフケアは、洗顔・口腔ケア・清拭・洗髪・入浴などに分けて考えます。皮膚の状態、身体機能、安全性、本人の希望を確認し、必要な方法を選択します。
OP|観察計画
- 清潔動作の実施状況と介助が必要な範囲
- 上肢の可動域、麻痺、拘縮、筋力、疼痛
- 座位・立位保持能力、ふらつき、転倒リスク
- 皮膚の発赤、湿潤、損傷、汚染、褥瘡リスク
- 清潔習慣、希望、羞恥心、介助への反応
- 安静度、創部、医療機器などの制約
TP|援助計画
- 清潔ケアの方法を本人に説明し、希望を確認する
- 洗える部位は本人が行えるよう物品配置を調整する
- 難しい部位は同意を得て援助する
- 必要に応じて清拭や部分浴など負担の少ない方法を選ぶ
- 皮膚の清潔・乾燥・保護に配慮する
- プライバシーと保温、安全確保を徹底する
EP|教育計画
- 本人に合った清潔保持の方法を説明する
- めまい、息切れ、痛みなどが生じた際の援助要請を説明する
- 家族・介助者へ必要な介助方法と皮膚観察のポイントを共有する
【更衣・整容】セルフケア不足の看護計画|OP・TP・EP
更衣では、衣服を選ぶ、袖やズボンに手足を通す、ボタンを留める、衣服を整えるなど複数の工程があります。麻痺や拘縮、認知機能の変化によって困難となる工程を具体的に把握します。
OP|観察計画
- 上衣・下衣の着脱能力と介助量
- 上肢・下肢の関節可動域、麻痺、拘縮、疼痛
- 手指の巧緻動作、ボタン・ファスナーの操作能力
- 座位・立位の安定性と転倒リスク
- 衣服選択や着脱手順の理解・遂行状況
- 本人の衣服の好み、整容習慣、羞恥心
TP|援助計画
- 着脱しやすい衣服を本人と相談して選ぶ
- 衣類を準備し、工程を分かりやすく説明する
- 本人が実施できる部分を確認し、必要な範囲で介助する
- 拘縮や疼痛に配慮し、無理な関節運動を避ける
- 必要に応じて作業療法士と動作方法や自助具を検討する
EP|教育計画
- 本人に合った衣服選択と着脱方法を説明する
- 疼痛や疲労が強いときは援助を求めるよう説明する
- 家族・介助者に本人の残存能力と必要な介助方法を共有する
【排泄】セルフケア不足の看護計画|OP・TP・EP
排泄のセルフケアでは、トイレへの移動、移乗、衣服操作、後始末などの排泄動作と、排尿・排便の状態を分けて評価します。羞恥心や本人の生活習慣にも配慮することが必要です。
OP|観察計画
- 排尿・排便パターン、尿意・便意の訴え
- トイレ移動・移乗・衣服操作・後始末の可否
- 筋力、麻痺、関節可動域、拘縮、疼痛
- 移動時のふらつきと転倒リスク
- 排泄動作の理解、手順の遂行、援助要請の可否
- 排泄に関する羞恥心、不安、希望
- トイレ環境、手すり、移動経路、照明
TP|援助計画
- 本人の排泄パターンと希望に合わせて援助する
- 安全な移動・移乗ができるよう環境を調整する
- 必要に応じて手すりやポータブルトイレなどの利用を検討する
- 衣服操作・後始末など必要な工程を援助する
- プライバシーを守り、介助前には本人へ説明する
- 排尿・排便の異常を確認した際は、必要な評価と報告を行う
EP|教育計画
- 排泄の希望や援助の必要性を伝える方法を確認する
- 安全な移動方法と必要時の援助要請を説明する
- 家族・介助者に安全な排泄援助の方法を共有する
【事例】慢性期脳梗塞・認知症・四肢拘縮がある80歳患者のセルフケア不足
ここからは、セルフケア不足の看護関連図を作るための架空の事例を紹介します。実在する患者の情報ではありません。
年齢:80歳
病期:脳梗塞の慢性期
設定された障害:高次脳機能障害、認知症、四肢拘縮
学習上の課題:食事・清潔・更衣・排泄に必要なセルフケア能力と援助を考える
※麻痺の左右差、嚥下障害、失禁、褥瘡、具体的なADL介助量などは未設定です。これらは実際に確認すべき評価項目として扱います。
病態・障害から生活動作への影響を考える
慢性期脳梗塞では、病変部位や障害の程度によって、運動、感覚、認知、言語などにさまざまな影響が残ることがあります。
高次脳機能障害では、注意・記憶・遂行機能などの変化が生活動作に影響する場合があります。また、認知症がある場合には、説明への理解、手順の遂行、環境への適応なども確認が必要です。
四肢拘縮がある場合は、関節可動域の制限や疼痛、姿勢調整の難しさなどが、食事・清潔・更衣・排泄の動作に影響する可能性があります。
この事例で考えたい看護上の課題
- 食事動作の困難と、栄養・水分摂取の安全性
- 清潔保持の困難と皮膚トラブルの予防
- 更衣動作の困難と残存能力の活用
- 排泄動作の困難と尊厳の保持
- 拘縮の進行や皮膚損傷の予防
- 認知機能に応じた安全確保と意思決定支援
- 家族・介助者の負担軽減と多職種連携
これらは、あくまで学習上の検討項目です。実際の看護問題として採用するかは、患者の観察所見とアセスメントに基づいて判断します。
セルフケア不足の看護関連図|病態から看護援助までのつながり
関連図では、疾患名から直接「セルフケア不足」につなぐのではなく、原因・背景 → 身体・認知機能の変化 → ADLへの影響 → 看護問題 → 看護援助という流れで整理します。
例えば、四肢拘縮がある場合には、関節可動域制限の程度を確認し、食具操作・洗身・衣服操作・トイレ動作のどこに影響するのかを検討します。
高次脳機能障害や認知症についても、一律に「すべて介助が必要」と考えるのではなく、理解・記憶・注意・手順遂行など、どの機能が生活動作に影響しているかを確認しましょう。
脳梗塞があるからといって、必ず嚥下障害・失禁・転倒・褥瘡が生じるわけではありません。実際に存在する症状と、今後注意するリスクを区別して整理しましょう。
【A3関連図教材】慢性期脳梗塞のセルフケア不足を1枚で学ぶ
看護Atariaでは、今回の80歳の架空事例を基に、セルフケア不足に関連する病態・障害・生活への影響・看護援助をA3横1枚にまとめた学習用関連図を用意しています。
関連図に含まれる内容
- 慢性期脳梗塞と身体・認知機能への影響
- 高次脳機能障害・認知症・四肢拘縮とADLの関係
- 食事・清潔・更衣・排泄のセルフケア不足
- 皮膚保護、拘縮への対応、安全確保
- 本人の残存能力を活かす看護援助
- 心理社会面、尊厳保持、家族・介助者への支援
無料の記事では考え方を学び、有料教材ではそれぞれの関連を図で確認できる構成です。
関連図の無料見本・商品詳細
商品の画像には、内容を確認できるよう、ぼかしとSAMPLE表示を入れた無料見本を使用しています。無ぼかしの販売データは購入者向けのダウンロード商品です。
教材形式:A3横向きの関連図。販売ページで実際のファイル形式・価格・利用条件をご確認ください。
※商品表示には、WooCommerce側でSKU「SELFCARE-STROKE-A3」を設定した商品の公開が必要です。販売前には、ファイルの可読性・医学的内容・ダウンロード動作を確認してください。
セルフケア不足の看護計画でよくある質問
Q. セルフケア不足と身体可動性の問題はどう違う?
身体機能そのものの問題と、食事・清潔・更衣・排泄など生活動作への影響を分けて考えます。両方が看護上の課題になることもあり、どちらか一つしか選べないわけではありません。看護診断名は学校・施設の指定に従ってください。
Q. 全介助の患者でもセルフケア不足の看護計画は立てられる?
立てられます。本人による動作の自立だけを目標にせず、適切な援助による清潔・栄養・排泄の維持、安全と安楽、本人の意思表示や生活上の選択への参加などを考えます。
Q. 認知症患者の「拒否」はどう評価する?
拒否という行動だけで判断せず、疼痛、不快感、不安、羞恥心、説明の理解、環境、関わり方などを確認します。本人の意思と尊厳を尊重し、時間や方法の調整、家族・多職種との連携を検討します。
Q. 看護目標が達成できない場合はどうする?
身体・認知機能の変化、目標の妥当性、介助方法、環境調整の不足などを再評価します。実際の状態に合わせ、達成可能で意味のある目標へ見直します。
まとめ|セルフケア不足の看護では残存能力と生活の質を大切にする
- セルフケア不足は、食事・清潔・更衣・排泄の具体的な動作ごとに評価する
- できない理由を身体・認知・心理・環境面から整理する
- OPでは現在の能力とリスク、TPでは具体的な援助、EPでは必要な説明・支援を考える
- 完全自立だけを目標にせず、安全・安楽・尊厳・本人らしい生活を大切にする
- 関連図では病態・機能障害・ADLへの影響・看護援助のつながりを明確にする
関連記事
術後の活動制限がある患者さんの看護計画を考える際は、こちらの記事も参考にしてください。

精神科訪問看護で生活状況や看護援助を記録する方法はこちらで解説しています。

参考資料・出典
- 厚生労働省「疾病・事業及び在宅医療に係る医療体制について」
厚生労働省の資料を確認する - American Heart Association / American Stroke Association, Guidelines for Adult Stroke Rehabilitation and Recovery(2016)
AHA/ASAのガイドラインを確認する - American Heart Association / American Stroke Association, Primary Care of Adult Patients After Stroke(2021)
AHA/ASAの科学的声明を確認する - NANDA International, Nursing Diagnoses: Definitions and Classification 2024–2026
NANDA International公式情報
この記事は看護学生・看護職を対象とした一般的な学習資料です。個別患者の看護診断や医療指示ではありません。公開前には内容を確認し、実際の看護は患者の状態・本人の意思・医師の指示・施設の手順に基づいて実施してください。

