レオポルド触診法とは?第1〜4段法の手順・観察項目・注意点を解説」
レオポルド触診法は、妊婦の腹部を4段階で触診し、胎児の位置や向き、先進部、下降の程度などを推定する方法です。母性看護学実習では、それぞれの段法で「どこを触れるか」「何を観察するか」を整理しておくことが大切です。
この記事では、第1〜4段法の手順、観察項目、注意点、実習記録の書き方を解説します。
第1〜4段法の要点
第1段法:子宮底部の胎児部分を確認する。
第2段法:胎背と四肢の位置を確認する。
第3段法:先進部の種類と可動性を確認する。
第4段法:先進部の下降や位置を確認する。
レオポルド触診法とは?目的と分かること
レオポルド触診法は、妊婦の腹部に手を当て、胎児の触れ方から胎位・胎向・先進部などを調べる腹部触診法です。妊娠後期の胎児の位置や、分娩に向けた先進部の状態を評価する際に用いられます。
- 胎位:胎児と子宮の長軸の位置関係(縦位・横位・斜位など)。
- 胎向:胎児の背部などが母体のどちら側にあるか。
- 先進部:骨盤入口に向かっている胎児部分。
- 下降:先進部が骨盤内へどの程度進んでいるか。
第1〜4段法の所見を組み合わせると、胎児心拍を聴取する部位を考える手がかりにもなります。ただし、触診で得られるのはあくまで推定です。胎位や先進部の確認が必要な場合は、超音波検査などの結果と照合します。
レオポルド触診法は何週から実施する?
レオポルド触診法は妊娠後期に胎位・胎向・先進部・下降の程度を評価する目的で活用されます。妊娠中期から腹部の観察や触診が行われることはありますが、「妊娠24週以降なら必ず第1〜4段法を実施する」という全国共通の開始条件として覚えるのは適切ではありません。
実施の時期や目的は、妊娠経過、妊婦の状態、診察・実習の方針によって異なります。看護学生は、教科書と実習施設の手順を確認してください。
実施前の準備と観察項目
- 説明と同意:触診の目的・方法を伝え、了承を得る。
- 排尿:必要に応じて排尿を促し、膀胱の充満による不快感を減らす。
- 手指の準備:手指衛生を行い、爪を短く整え、手を温める。
- 体位:基本の手技は仰臥位で膝を軽く曲げて行う。長時間の仰臥位を避け、母体の症状に応じて体位を調整する。
- プライバシー:腹部以外の露出を少なくし、タオルなどを使用する。
- 母体の状態:腹痛、出血、強い子宮収縮、めまい、冷汗、悪心、気分不良などがないか確認する。
安全のポイント
強い子宮収縮、痛み、出血、めまいなどがある場合は、無理に触診を続けません。触診中に異常を認めたときは中止し、担当助産師・医師に報告して指示を受けます。
レオポルド触診法の第1〜4段法|方法・観察項目・注意点
第1段法|子宮底部にある胎児部分を確認する
目的:子宮底部にある胎児部分を触れ、頭部か殿部かを推定します。
実施手順
- 実施者は妊婦の頭側を向いて立つ。
- 両手を子宮底部に当て、手掌・指腹でやさしく触れる。
- 触れた部分の形・硬さ・輪郭・動きやすさを確認する。
観察項目:子宮底の位置や形、頭部・殿部と思われる部分の触れ方、腹壁の緊張、妊婦の反応。
所見の目安:硬く丸く、比較的輪郭が明瞭なら頭部、軟らかく不整な形なら殿部を疑います。子宮底に頭部が触れる場合は骨盤位、殿部が触れる場合は頭位を考える手がかりになります。
注意点・特記事項:指先に力を集中させず、手掌全体で静かに触れます。触知できないときは無理に押さず、所見を「不明瞭」「触知困難」と記録します。
第2段法|胎背と四肢の位置を確認する
目的:子宮の左右を触れ、胎児の背部と四肢が母体のどちら側にあるかを推定します。
実施手順
- 妊婦の頭側を向いたまま、両手を子宮の左右側面に移動する。
- 片手で子宮を支え、反対側を手掌全体でやさしく触れる。
- 左右を交互に触れ、平滑で広い面と、小さく不整で動きのある部分を確認する。
観察項目:胎背の位置、四肢と思われる部分、胎動、子宮壁の緊張、母体の不快感。
所見の目安:広く平滑でしっかりした面は胎背、小さく不整で動く部分は四肢を示唆します。
注意点・特記事項:左右の所見を比較し、片側を強く押し続けないようにします。胎背の位置は胎児心拍を聴取する場所を考える手がかりですが、触診だけで胎児心拍数や健康状態を評価することはできません。
第3段法|先進部の種類と可動性を確認する
目的:恥骨結合の上にある胎児部分が頭部か殿部か、また可動性があるかを推定します。
実施手順
- 妊婦の頭側を向き、片手を恥骨結合のすぐ上に当てる。
- 母指とほかの指で先進部をやさしく挟むように触れる。
- 硬さ、丸さ、可動性を、妊婦の反応を見ながら確かめる。
観察項目:先進部の形・硬さ・位置・可動性、妊婦の痛みや不快感。
所見の目安:硬く丸い部分なら頭部、比較的軟らかく不整な部分なら殿部を疑います。可動性があれば、先進部が骨盤内に固定していない可能性があります。
注意点・特記事項:可動性だけで骨盤内への進入程度を断定しません。疼痛や強い張りがあれば無理に続けず、担当者へ報告します。
第4段法|先進部の下降と位置を確認する
目的:先進部が骨盤入口方向にどの程度下降しているか、頭部の位置や触れ方を調べます。
実施手順
- 実施者は妊婦の足側を向く。
- 両手を下腹部の左右に置き、指先を骨盤入口方向に向ける。
- 下腹部から骨盤入口の方向へ、両手でゆっくり触れながら先進部の位置や抵抗を確認する。
観察項目:先進部の触知範囲、下降の程度、左右の抵抗の違い、妊婦の痛みや気分不良。
所見の目安:児頭が骨盤内へ深く進入している場合、腹部から触れられる頭部の範囲が少なくなることがあります。
注意点・特記事項:児頭の下降や屈曲の評価には技術と経験が必要です。判断に迷った場合は推定として記録し、助産師・医師による診察所見と照合します。
第1〜4段法の観察項目を一覧で確認
| 段法 | 主に確認する内容 |
|---|---|
| 第1段法 | 子宮底部にある頭部・殿部、子宮底の位置 |
| 第2段法 | 胎背・四肢の位置、胎動 |
| 第3段法 | 先進部の種類、硬さ、可動性 |
| 第4段法 | 先進部の下降、骨盤入口付近での触れ方 |
第1段法と第3段法では頭部・殿部の位置を対応させ、第2段法では胎背の方向を確認します。第4段法では先進部の下降をさらに調べ、4段階の所見を総合して評価します。
実施中・実施後の注意点と特記事項
- 子宮収縮:触診中に腹部が硬くなった場合は、いったん手を止め、弛緩してから再開の可否を判断する。強い収縮が続く場合は中止する。
- 母体の症状:顔色、表情、痛み、めまい、冷汗、悪心、出血などを観察し、異常時は中止・報告する。
- 所見が不明瞭な場合:腹壁の状態や胎児の向きなどで触知しにくい場合がある。無理に判定せず、必要に応じて他の検査で確認する。
- 終了後:楽な体位に戻し、着衣を整え、気分不良がないか再確認する。
- 記録:実施した段法、触知した所見、推定した内容、実施中の反応、報告・連携事項を分けて記す。
仰臥位低血圧症候群が疑われたときの対応
妊娠後期には、大きくなった子宮が仰臥位で下大静脈などを圧迫し、母体に血圧低下や気分不良が生じることがあります。長時間の仰臥位を避け、触診中も母体の状態を確認しましょう。
- 触診を直ちに中止する。
- 左側臥位へ体位を変える、または子宮を左側へ傾ける。
- 意識、顔色、めまい、悪心、血圧・脈拍などを確認する。
- 担当助産師・医師へ速やかに報告し、改善しない場合や重症の兆候がある場合は施設の緊急対応に従う。
体位の注意
仰臥位に伴う下大静脈圧迫が疑われるときは、左側への体位変換・傾斜が基本です。強い気分不良がある妊婦に、触診を優先して続けることは避けます。
看護学生向け|レオポルド触診法の記録例
以下は学習のために作成した架空事例です。実際の患者記録ではなく、実施していない観察や援助を記載してはいけません。
記録例(架空)
実施目的を説明し、本人の了承を得て腹部触診を実施。第1段法では子宮底部に軟らかく不整な部分を触知。第2段法では母体左側に広く平滑な面を触知。第3段法では恥骨結合上に硬く丸い部分を触知。第4段法では先進部の下降の程度は明確に判断できなかった。実施中の腹痛・めまいの訴えなし。触診所見から頭位を推定したが確定せず、指導者へ所見を共有した。
記録で区別すること:「実際に行ったこと」「触れた事実」「そこから推定したこと」「報告・連携した内容」です。胎児心拍や超音波所見を確認していない場合、これらの結果を付け加えないようにします。
よくある質問
Q.妊娠24週以降なら誰にでも実施しますか?
一律の実施条件ではありません。妊娠週数に加え、母体の状態、観察目的、所属施設の方針によって実施を判断します。
Q.第3段法と第4段法はどう違いますか?
第3段法は恥骨結合上で先進部の種類と可動性を確認し、第4段法では足側を向いて両手で先進部の下降や位置を詳しく観察します。
Q.触診だけで逆子かどうか分かりますか?
骨盤位などを疑う手がかりになりますが、触診だけで確定しません。必要に応じて超音波検査などで確認します。
まとめ|手順と観察項目をセットで覚える
レオポルド触診法は、第1段法で子宮底部、第2段法で胎背と四肢、第3段法で先進部、第4段法で下降の程度を確認します。胎位や先進部の推定だけでなく、妊婦の同意・安楽・安全にも十分配慮することが大切です。
看護学生は、各段法の「触れる場所」「確認する項目」「注意点」をセットにして理解し、触知した事実と判断を区別して記録しましょう。
関連記事
参考文献・参照元URL
手技・安全上の注意は、以下の公開資料を参考に整理しています。実際の実施方法は、所属施設の手順および助産師・医師の指導に従ってください。
医学書院『根拠と事故防止からみた母性看護技術 第4版』付録「レオポルド触診法1・2」 https://www.igaku-shoin.co.jp/application/files/8617/6880/7374/ch01.pdf
国際協力機構(JICA)支援事業 母子保健マニュアル(印刷61〜62ページ) https://www.jica.go.jp/Resource/project/english/cambodia/021/materials/c8h0vm0000fb1s89-att/materials_11.pdf
NCBI Bookshelf:Superville SS, Siccardi MA. Leopold Maneuvers(2024年更新) https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK560814/
American College of Cardiology:Cardiovascular Imaging in Pregnancy(2025年) https://www.acc.org/Latest-in-Cardiology/Articles/2025/01/06/18/15/Cardiovascular-Imaging-in-Pregnancy
本記事は看護学生向けの学習資料です。個別の妊婦に対する診断・実施可否の判断を目的とするものではありません。
